修理記録
お返しするときにお渡ししている報告書から、持ち主の了解をいただいたものを載せています。見出しをひらくと、そのとき測った数字と、何をどう考えたのかが出ます。
E線だけが鳴りすぎる
他の弦に比べてE線だけが金属的で、弾いていて耳につくというご相談。音は出ているので不具合とは言いにくく、数年そのまま使っていたそうです。開けて測ると、魂柱が駒足の内側から1.8mm外側にずれていました。
| 採寸箇所 | お預かり時 | 返却時 |
|---|---|---|
| 魂柱の位置(駒足内側から) | 1.8mm | 0.2mm |
| 駒の厚み(上端) | 4.7mm | 4.5mm |
| 弦高(G線・指板端) | 5.6mm | 5.5mm |
魂柱を規定の位置に戻し、あわせて駒の上端を0.2mm落として全体の当たりを揃えました。E線が落ち着いた分、G線側の反応が少し鈍く感じられるはずなので、1か月後にもう一度お持ちいただく前提でお返ししています。
お預かり 3日/14,300円
12フレット付近でビリつく
10年以上、調整に出したことがない1本。順反りが出ていて、同時に3フレットから7フレットあたりのフレットが局所的に減っていました。片方だけ直しても、もう片方が残ります。
| 採寸箇所 | お預かり時 | 返却時 |
|---|---|---|
| ネックの相対的な反り | 0.02mm | 0.18mm |
| フレット頂点のばらつき | 0.14mm | 0.02mm |
| 12フレット弦高(1弦) | 1.6mm | 2.0mm |
| 12フレット弦高(6弦) | 2.2mm | 2.6mm |
ロッドで反りを規定内に戻してから、すり合わせ。サドルは削らず、元の高さを残しました。弦高は少し上がりますが、その分だけ音量が戻ります。弾き心地を優先して下げるかどうかは、しばらく弾いてから決めていただくことにしました。
お預かり 10日/23,100円
冬に開いた表板の接ぎ目
年明けから音がぼやけていて、よく見たら下部の接ぎ目が開いていた、というご相談。膠は木より弱く作ってあるので、乾燥で木が縮んだときに接着のほうが先に負けます。割れずに済んだ、という見方をします。
| 採寸箇所 | お預かり時 | 返却時 |
|---|---|---|
| 接ぎ目の開き(長さ) | 152mm | 0mm |
| 最大の開き幅 | 0.9mm | 0mm |
| ケース内湿度(お預かり時) | 31% | 52% |
膠を温め直して閉じ、内側から補強を1枚。同じことが再発しないよう、ケースに入れる湿度調整剤と、置き場所についてもあわせてご案内しました。修理より、そちらのほうが効きます。
お預かり 16日/33,000円
ペグが止まらない
お子さんが自分で調弦できず、毎回保護者の方が合わせているとのこと。ペグが滑るというより、押し込んでも数分で戻る状態でした。穴が縦方向に伸びていて、真円ではなくなっていました。
| 採寸箇所 | お預かり時 | 返却時 |
|---|---|---|
| ペグ穴の径(A線側・上下) | 7.9mm | 7.6mm |
| ペグ穴の径(A線側・左右) | 7.6mm | 7.6mm |
4つとも埋め直して開け直し、ペグをすり合わせました。アジャスター付きのテールピースに替える方法もありますが、まずは正しくペグで合わせられる状態にするほうが先だと考えています。次のサイズに買い替えるまで、あと2年ほど使える見込みです。
お預かり 12日/24,200円
ボリュームを回すとガリが出る
ボリュームを絞る途中で「ガリッ」と鳴り、たまに音が出なくなる。演奏中に切れるほうが問題なので、そちらから見ました。原因は2つ重なっていました。
| 採寸箇所 | お預かり時 | 返却時 |
|---|---|---|
| ボリュームポット抵抗値 | 198kΩ | 252kΩ |
| ブリッジアース | 断線 | 導通あり |
ポットを交換し、外れていたブリッジアースをはんだ付けし直しました。30年前の配線材はまだ十分使えたので、そのまま残しています。全部新しくすれば直りますが、この楽器の音は古い配線込みのものです。
お預かり 4日/8,800円
ハイポジションが押さえづらい
買ったときから弦高が高く、10フレットから先が押さえられないというご相談。ネックの反りは正常だったので、サドル側で下げられる範囲を見ました。
| 採寸箇所 | お預かり時 | 返却時 |
|---|---|---|
| 12フレット弦高(1弦) | 3.9mm | 3.2mm |
| 12フレット弦高(6弦) | 4.6mm | 4.0mm |
| サドルの残り高さ | 7.1mm | 5.6mm |
クラシックギターは弦の振幅が大きいので、スチール弦と同じところまでは下げられません。今回はここが下限です。もう一段下げたい場合はネックの角度を作り直す作業になるため、まずこの高さでしばらく弾いてみてくださいとお伝えしました。元のサドルは削らず、新しく作ったものと入れ替えて、両方お返ししています。
お預かり 5日/11,000円
数字を残すのは、次のためです
一度の修理で終わる楽器はほとんどありません。数年後にまた同じ症状が出たとき、前回どこがどれだけ動いていたかがわかっていれば、原因までの距離がぐっと縮まります。記録を残すのは、そのときの自分と、その楽器の次の持ち主のためです。